清くて正しい社内恋愛のすすめ
 でもさすがにもう我儘(わがまま)は言えない。

 周りには一切見せないが、この五年間で祖母も急に年を取った。

 穂乃莉の前でだけ、疲れた顔を見せるようになっている。

 それもあって、穂乃莉は今回、久留島の本社へ戻ることを決意したのだ。


 ――本当は、もっとここで仕事したかったけど……。


 穂乃莉は、談笑している花音や卓に目をやる。


 国内ツアーチームは、課長の相田 拓真(あいだ たくま)が上下関係なく意見を聞き入れるタイプの人で、アイディアや考えを率直に言いやすい雰囲気がある。

 だからか、それぞれがお互いを信頼し、誰かが悩んでいればすぐに寄り添って協力するような仲の良いチームだ。

 メンバーは課長の相田を筆頭に、穂乃莉と加賀見、販促担当をしている先輩の石崎 玲子(いしざき れいこ)、後輩の花音と卓。


 美男美女がそろっている国内チームだが、浮いた話がないチームとしても有名だった。

 ただ一人、加賀見を除いては……。


 ――加賀見は浮いた話ばっかりだもん。


 穂乃莉はつい最近も花音が話していた、加賀見と受付の女性社員との噂を思い出す。


 ――花音ちゃんの同期って言ってたから、年下だよね。
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