清くて正しい社内恋愛のすすめ
 加賀見は穂乃莉と同じ、ツアープランナーだ。

 帰国子女だったという加賀見は、スマートな動作と甘いマスクで、社内でも特にファンが多いし常に話題の中心にいるような人物だ。


 仕事も入社早々、持ち前のコミュニケーション能力と鋭い洞察力で大手との契約を次々に決め、あっという間に営業成績はトップに上りつめている。

 そんなこともあり、穂乃莉は加賀見を勝手にライバル視していた。


 その加賀見が、なぜ突然“社内恋愛契約”などと言い出したのか。

 思い当たるのは、昨日の居酒屋での会話しかない。


 チームのメンバーは普段から、誰ともなく声をかけては、食事をして帰ることも多く、昨日もクリスマスイブだというのにも関わらず、残業後にいつものように居酒屋へなだれ込み、あーでもないこーでもないと楽しく過ごしていた。

 その席で穂乃莉は「来年の四月には、久留島の本社へ戻ることが決まった」と、みんなに打ち明けたのだ。


 穂乃莉がいずれKRSトラベルを退職することは、みんなも了承していることだ。

 だから重くならないようにと、お酒もすすんだ頃に明るく話題に出した。
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