清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は加賀見の横顔をじっと見つめる。

 加賀見は穂乃莉のことを考えて、あえて連絡しなかったということなのだろうか。


 ――私のこと、忘れてたわけじゃないってこと……?。


 じっと見つめる穂乃莉の前で、加賀見の頬が次第にほんのりピンク色になっていくのが見えた。


「休みの間も、ちゃんとお前のこと考えてたから」

「へ?」

 予想もしていなかった加賀見の言葉に、穂乃莉から変な声が漏れる。

 穴が開くほど見つめた加賀見の頬は、さっきよりももっと濃いピンク色だ。


 ――なんなの、そのちょっと照れてる顔……。


 自分のことを考えてたと言われた嬉しさと、腹黒王子のレアな顔つきに、穂乃莉は悶絶しそうになる。


「おい、もういいだろ?」

「え?」

「人の顔、見すぎ。さすがに照れるから」

 じーっと見つめ続ける穂乃莉に、加賀見が困ったような声を出し、穂乃莉は慌てて目線を逸らした。


「そ、そういえば、加賀見は? 実家に帰ってたの?」

 穂乃莉は取り繕うように話を振る。
< 75 / 445 >

この作品をシェア

pagetop