清くて正しい社内恋愛のすすめ
「このチームで仕事できるのも、あと三ヶ月なの。仕事ばっかりで過ごしてたから、もっと恋愛でもしとけばよかったなぁ、なんてね」

 えへへと笑った穂乃莉に、突然、花音が抱きつきわんわん泣き出した時は、どうしようかと思ったが、みんなは静かに穂乃莉の話を受け入れてくれた。

「寂しくなるな……」

 相田の落ち着いた声が妙に心に刺さり、穂乃莉は涙を堪えるようにぎゅっと両手を握りしめてから、わざと明るい顔を見せた。


「なのであと三ヶ月は、死ぬ気で働きます!」

「おぉ、言ったね! じゃあ今日はとことん飲もう!」

 姉御肌の玲子が穂乃莉の背中をドンッと叩き、それからはいつも以上にみんなはしゃいで過ごしたのだ。


 ――そういえばあの時、加賀見だけが何も言わなかったんだよね。


 加賀見は座敷のテーブルの端っこで、ビールのジョッキを手に、ただ静かにその様子を眺めていた。

 普段からそんなにはしゃぐタイプでもないし、花音のきゃぴきゃぴしたノリに、迷惑そうな顔をすることも度々だったが……。
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