清くて正しい社内恋愛のすすめ
 静かな室内には、キーボードのタイプ音に混ざって、空調機の音やパソコンのファンの音だけが、途切れなく耳に届いている。

 その一定のリズムが心地良いと、ぼんやりと思っていた時、カチャリと扉が開く音がした。

 急に耳に届いた別の音に、穂乃莉はドキッとして振り返り、そこに立つ人物を見て小さく息を飲む。


「久留島さん。少しお時間良いですか?」

 柔らかいウェーブの髪を揺らしながら立っていたのは白戸 咲良(しらと さくら)だった。

「う、うん……」

 穂乃莉は戸惑いながら声を出すと、軽く腰を浮かす。


 受付に配属されている白戸とは、今まで全く接点がなかった。

 きっと加賀見との噂話を聞かなければ、顔をまともに合わせることもなかっただろう。

 普段は制服で勤務している白戸は、今は上品なツイード生地のワンピース姿でゆっくりと歩いてくると、穂乃莉が勧めた椅子にそっと腰かけた。

 色白で華奢な姿は、穂乃莉から見ても、守ってあげたくなる女子のタイプ、ナンバーワンだ。
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