清くて正しい社内恋愛のすすめ
「二人で出張なんて……」

 穂乃莉は頬をピンクに染めると、「わぁ」と顔を両手で覆った。

 奥の席に数人しかいなくなったフロアに、やたらと通る自分の声が響き、穂乃莉は一人ひどく恥ずかしさに襲われる。

 慌てて取り繕うように画面を食い入るように見つめると、今度は次第に顔を青くした。

「……ってことは、それまでに企画書を完成させなきゃいけないってことだよね!? どうしよう。時間が足りないよー」


 加賀見との“契約恋愛”が始まってから、穂乃莉の心はジェットコースターのように、急上昇急降下を続けている。


 ――でも、これが恋するってことなのかな……?


 考え出すとまたループに入ってしまう。

 穂乃莉は頬をパンパンと軽く叩くと、閉じていた企画書を開きキーボードに向かった。


「お先に失礼しまーす」

「戸締りだけお願いしますね」

 しばらくして、残っていた他部署の社員が出て行き、フロアには穂乃莉一人になった。
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