君の心をみせて
高宮の笑顔はすっと消えた。

「高宮はちゃんと悲しんでるし、さみしがってる。つらいと思ってる。感情がないんじゃなくて、ただ自分の思いに名前が付けられてないだけだよ」

「私って悲しんでるの?」

俺は頷く。

高宮の瞳から涙が落ちた。

頬を伝って俺の手に触れる。

「あ、えっ」

高宮は自分の涙にうろたえている。

俺は高宮を引っ張り上げて抱きしめた。

力強く、でも儚いものに触れるように。

俺はそのまま高宮の背中をさすった。

ゆっくりと、優しく。

高宮は俺の肩に頭を預けて泣いた。

「俺は、高宮の心、好きだよ。素直で、優しい」

俺たちはしばらく、暗くなった教室でそのままでいた。

~啓斗side. End~
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