添い寝だけのはずでしたが
ああっ……葵さまだ……。


嬉しさと恐怖が入り混じって、もう何も考えられなくなる。


出ないわけにもいかなくて通話を開始した。


怒鳴られる……?


「やっと繋がったな……」


 落ち着き払った声が、冷静過ぎて逆に怖い。


「心配かけてごめんなさい……」


「それはいい……無事か?」


「うん」


「そうか、それならよかった。疲れてるだろうから、無理するなよ」


 予想外にとても優しい声と、気遣いに驚く。


 それに、気のせいか声が弾んでいるような……。


「ありがとう。驚かないで聞いてね……実は今、他の島にいるの。忘れ物を取りに船に乗ったら……戻れなくなって……」


「フッ……お前らしいな」


 驚くか嫌味を言われるかと思ったら、そうではなかった。


 相変わらず落ち着いた口調で、不安だった心が少しずつ落ち着いていくのが分かる。


「さっきまで乗船所にいて、今は空港にいるの。だから心配しないでね」


「そうか……分かった……」


 安堵のため息が聞こえて、とてつもなく心配をかけてしまったのだと反省する。


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