私が社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ユージーンは鉄紺の瞳を細くして、眉間に深くしわを刻む。
「なんだ? その噂は……」
「ユージーン様は、殿下の婚約披露パーティーにも欠席でしたからね」
 それは東の森で魔獣が暴れているからなんとかしろと、国王が言ってきただめだ。
 王太子の婚約パーティーと、国王命令の魔獣討伐。どちらを優先させるべきかは、わかりきっている。
 その代わりといってはなんだが、ネイサンを婚約パーティーに出席させた。ネイサンは根っからの文官である。だからこそ、ユージーンにとっては助かる存在なのだ。
「そのパーティーで何かあったのか?」
「まぁ。アルバート殿下の料理を奪ったり、婚約者のハリエッタ嬢のドレスに飲み物をぶっかけたり。とかですかね?」
「……それでは、結婚できないというのも納得できるな。まるで、子どものような女性だな」
 しかしその女性がユージーンの相手なのだ。しかも年はユージーンの五歳年下の二十一歳。年齢差として悪くはないが、この国の女性の平均結婚年齢からはやや遅れている。
 そんな女性と結婚しろとは、アルバートの嫌がらせではないかと思えてくる。むしろ、本当に嫌がらせなのでは。
「……ちっ」
 ユージーンは、あのにっくきアルバートの顔を思い出して舌打ちをした。
「王命ですからね。お断りは……できませんね」
「アルバートの嫌がらせだな」
 そう呟けば、ネイサンもニタリと笑う。
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