Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
すれ違い
涼と恭也とは小学校から一緒で最高の友達。涼が軽音楽部作るって言ったときも、この二人と一緒にバンドできるんだ、嬉しい!って思った。
そこに夏樹が加わった。
初めて保健室で見たときはめっちゃ怖かった。俺、ガキの頃からお調子者って言われていたんだけれど、案外ビビりなのよ。お化け屋敷入れないし。
それに俺と夏樹では楽器は違うけれど、相当な差がある。涼や恭也よりも歴が少ない俺が、この中でやっていけるか?ってさ。だから夏樹のこと最初からウェルカム!って思いでいたわけじゃなかった。
でも実際は全然違ったんだよ!
教え方も上手いし、俺らほどじゃないけど面白いことがあると笑う。何より、本気でギターを弾いている夏樹はかっこいい。高校生でステージも立っているんだ。すげぇよ。そういう夏樹の姿見ていると、俺もベース頑張ろうって思えるんだ。
「なぁ、この曲の一番だけセッションしたい!」
「いいよ。カウントよろしく。」
「これサビいいよな!夏樹もやろうぜ!」
「うん。」
4人で演奏する時間が楽しい。放課後の寄り道も、どうでもいいような話も全部楽しい。ずっと一緒にいたいなって思う。
でも、夏樹と恭也が喧嘩した。
2人が言い争う姿を見て怖くなった。俺らの知っている2人と違う。恭也も、何年も一緒にいるけれどあんなに声を荒げるのは初めて見た。夏樹が飛び出したあと、恭也は無言でギターを片付け始めた。
「おい、恭也何であんなこと言ったんだよ!バンドしたくないって…Cyanって何だよっ⁉」
涼が聞くも恭也は何も喋らない。そのまま何も言わず、帰ってしまった。俺は「待って」と声をかけることもできず、ただ、立ちっぱなしでいるだけ。
「………今日はもうやめよう。」
立ち尽くす俺に涼はそう言った。心の整理ができないまま。目の前で喧嘩が起こったこともそうだが、それ以上に戸惑っているのが、
「お前がCyanなんだろ!」
恭也が発したこの言葉。理解できなかった。でも、その言葉を聞いた夏樹は目を見開いて焦りだした。夏樹はポーカーフェイスだ。何があっても動じないし、感情を表に出すことが少ない。そんなやつが、呼吸をおかしくしながら震え始めたんだよ。
「……夏樹って、Cyanなのかな…。」
帰り道で涼にそう聞いた。
「恭也の…勘違いだよね…?」
勘違い、できればそう信じたい。
「………そうでもないんじゃないか。」
少し間をおいてから涼が答えた。
「今までにも、ちょっと違うなって思うところはあっただろ。」
違うところ…?
「俺らが歌い手の話、特にCyanの話をするときいつも途中で遮っていただろ。それにアイツ、カラオケ誘っても絶対に行かなかったし。…憶測で語るのはダメって分かってる。けど、あの反応見たらさ。」
仮にもし夏樹がCyanだとしたら…。
これからどう接すればいい?
俺らはただの高校生。
夏樹はネット上で注目されている歌い手。
住んでいる世界が全く違う。
「これに関しては俺らが追求することじゃない。夏樹が直接話してくれるのを待つしかないと思う。今は、2人にの間にある壁を取り除くことが第一優先だ。」
不安でしようがない。
今はいつもみたいに冗談言う余裕もない。
これから、どうなるんだ…。