呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
「ありがとう」
お茶を注いでくれた侍女にお礼を言うと、侍女は顔を赤らめ、戸惑った様子を見せた。
「あ、あのっ……! こちらは、紅茶に入れるお砂糖です」
ハート型の砂糖が入ったシュガーポットを私のそばに置いてくれる。
「まあ! 町並みだけじゃなくて、砂糖まで可愛いなんて!」
ひとつひとつが驚きの連続だった。
私の驚く姿を馬鹿にせず、微笑ましく眺めている視線に気づき、我に返った。
「あ……。申し訳ありません。はしゃいでしまいました」
「いや、気に入っていだけて嬉しく思う」
国王陛下が笑う。その顔は、アレシュ様に似ていた。
そして、その隣に座るシュテファン様もそっくりで―ーって、犬がいますね?
茶色の大きな犬が、皇帝陛下の足元に控えている。
とても忠実な犬のようだったけど、気のせいでなければ、犬の視線を感じる。
こちらを探るような黒い目。
――なんだか、お前は誰だと尋ねられているような気がします。
そういえば、さっきの鷹にしても、人の言葉を理解して飛んでいるように思えた。
そんなわけないのに、どうして?
「シルヴィエ様、アプリコットのタルトはお好きですか?」
「は、はい!」
シュテファン様がアプリコットのタルトを勧めてくれた。
私の皿に大きく切り分けられたケーキがのせられ、和やかな空気になった。
みんなで会話を楽しもうとした瞬間、ヒステリックな声が雰囲気を台無しにした。
「シルヴィエ皇女! なにをなさっているんですか!」
それは、わかりやすい叱責の声。
手にしたフォークが地面に落ち、私の幸せな夢は終わりを告げた。
神に呪われたお前が、幸せになる権利はない――そう言われたような気がした。