呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 その恩に報いなければならないというのに、父上はなにをしているのだろうか。
 だが、侍女は皇宮を去ることを拒んだ。

「いいえ。まだ去るわけにはいきません。まだ見届けてないのです。私の罪の行き先を……」
「罪?」
「いいえ。ラドヴァン様にお声をかけていただき、嬉しゅうございました。このまま、私のことは捨て置いてくださいますよう」

 老いた侍女は震え声で、その場に土下座し、床に頭をこすりつけた。
 どういう意味かわからなかったが、俺が立ち去るまで、そうしていた。
 
 ――罪。その言葉がひっかかり、心の中に不安が広がる。

 言葉にできない不安は、黒く胸に染みつき、母上が亡くなる直前の言葉を思い出していた。

『ラドヴァンが皇帝になれば、わたくしは陛下に復讐できる……!』

 鬼気迫る顔、掴まれた腕の痛み、必死な母上の声。

「復讐とはなんだ……?」

 俺の問いに答えてくれる存在はどこにもいない。
 シルヴィエを失った今、気が付くと、俺に味方はおらず、一人になっていた――
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