呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 泣いてしまったら、自分が惨めで救われない存在だと認めてしまうような気がして――人前で、初めて涙がこぼれた。
 私は自分を殺そうとしていない人でさえ、傷つけてしまうのだろうか。
 泣いていた私に気づき、アレシュ様は手を伸ばし、涙に濡れた頬に触れた。

「私に触れてはいけません! 危険ですから……!」

 アレシュ様が優しい緑の瞳で、私を見つめ、微笑んだ。

 ――どうして微笑むの?
 
 私があなたを苦しめているのに。
 ロザリエのように、私を嫌って罵倒し、お兄様みたいに冷たい態度をとってもおかしくなかった。
 アレシュ様は私の手を握り直し、口を動かす。

「さわ……ぐな……。シュテファンを……呼べ……」

 兵士たちはシュテファン様を呼ぶため、バルコニーから出ていった。
 シュテファン様はバルコニーのそばで控えていたのか、すぐに現れた。

「兄上……!」

 シュテファン様は倒れているアレシュ様のそばに駆け寄り、膝をつく。
 バルコニーでなにかあったのだと、招待客たちは察したけれど、兵士たちはカーテンを一斉に閉めた。

「ゼレナ」

< 144 / 263 >

この作品をシェア

pagetop