呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
「毒の分析が完了したら、医療院の薬草師から、解毒薬を調合させる。それまで、水の神の力を借りるぞ」
「はいっ! 兄上!」
時間が勝負とばかりに、シュテファン様はすぐにバルコニーから飛び出していった。
私に対して、警戒を解かない兵士たちにアレシュ様は言った。
「お前たちも広間に戻れ。招待客がおかしく思う」
「ですが、アレシュ様……」
「倒れられた毒は帝国のものでは……」
アレシュ様は兵士たちに笑って見せた。
「毒などなかった。たとえ、それが毒だったとしても、風の神の加護を受けた俺が簡単に死ぬわけないだろう? ここは俺に任せて戻れ」
納得するしかない言い方に、兵士たちは渋々、窓を閉めた。
シュテファン様、兵士たち――アレシュ様はみんなから好かれ、信頼している。
でも、私を心配する人は、誰もいなかった。
騒ぎになっても駆けつけず、私は一人のまま、取り残されていた。
「さて、シルヴィエ。今後の相談をしようか」
――処刑される。
アレシュ様に危害を加えたのだから、そう言われても不思議ではなかった。
私の不安を消すように、体を軽々と抱き上げると、アレシュ様は優しく笑った。
「改めて結婚を申し込む。俺の妻になってくれるか?」
私の呪われた身を知り、呪いを受けても逃げなかった唯一の人。
涙は悲しい時だけ、こぼれるのではないと、生まれて初めて知った。