呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 自分の命を帝国が狙っていたと、アレシュ様が気づいていないはずがない。
 私の罪を問わないために、わざと逃がしたのだ。
 
「よろしかったのですか?」

 あえて言葉を伏せた私の問いに、アレシュ様は余裕の笑みを浮かべた。

「二度目はない」
「はい」

 怒っていないわけではなく、今回だけは見逃すのだとわかり、私はうなずいた。
 
「私からも尋ねたいことがあります」
「なんだ?」

 昨晩、部屋に飾られた白い花、異国の香り――私が大切にしている思い出。
 花瓶から花を一本手に取り、アレシュ様を見つめた。

(スニフ)の花をご存じですか?」

 緑色の瞳が優しく私を見つめた。

「約束をした。いつか、あなたにたくさんの花を差し上げたい、と」

 アレシュ様は私に近づき、あの日と同じように、私の手に触れた。

「近寄っては危険です」 
「また同じことを言う」
「呪われていますから」

 夏の木々と同じ色をした緑の瞳が、私を映していた。
 顔が近づいても、今度は怖いと思わない。
 アレシュ様は昨晩と同じように、私の唇に口づける。
 今度は倒れない。
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