呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 ハッと我に返った。
 
 ――そうでした。うっかりいつものくせで、畑仕事をしようなんて、考えてしまいました。

 でも、捨てがたい収穫の楽しみ。
 それを使った料理の数々。
 
「皇女のたしなみとして、畑はどうでしょう?」
「聞いたことがございませんね。王宮専属の農夫や庭師がおります。なにか植えて欲しいものがあれば、彼らに命じてくださいませ」

 真顔で返ってきた答えに、そうですねと小さくうなずいた。 

「シルヴィエの着替えは終わったか?」
「あとは髪だけでございます」

 ナタリーは緑のリボンを編みこみ、髪を結ぶ。
 
「まあ! ナタリー、ありがとう。とても上手なのね」
「侍女として、できて当たり前のことです」

 ふわっとしたドレス、素敵な髪に、明るい日差し。
 同じ世界のはずなのに、まるで光の中にいるように眩しい。

「……ありがとう」

 鏡を見て。もう一度、お礼を口にする。
 無表情だったナタリーが微笑んだ気がした。
 そして、ナタリーもまた同じ言葉を繰り返した。

「侍女ですから、当然のことでございます」

 さきほどより、柔らかな口調だった。

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