呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
「なんだ? ヴァルトル、戻れ」

 アレシュ様は警戒して、ヴァルトルを呼び戻す。
 ヴァルトルは庭園の木々の隙間をすり抜け、まっすぐにこちらへ飛んでくる。
 地面から、なめらかな曲線を描き、肩の高さまで、上昇し、風が起きて、前髪が跳ねる。
 両翼を何度かはばたかせて、アレシュ様が差し出した腕に止まった。

「素敵ですね!」

 ヴァルトルは鷹の形をしているけど、本性は風。
 立派な翼と凛々しい顔つきをしている。
 部屋に風が吹き込み、客人を連れてきた。

「古き神――いいえ、それは風の神のお姿。やはり、ドルトルージェの王族は、他国の王族とは異なりますな」

 庭に入ってきたのは、庭師たち――黒髪に青い瞳をした男。
 帝国の庭師、ハヴェルだった。
 
「王族の方は、生まれた時、神から加護を授けられると聞いております。アレシュ様は風の神、弟のシュテファン様は水の神というように」
「なるほど。お前が新しく入った庭師か。庭師たちが騒いでいた。各国の王宮の庭を手掛ける天才庭師が、やってくると」
「天才ではありません。すべて、草木が美しく育つ手伝いをしているだけのことです」

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