呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 ハヴェルは有名な庭師だったようで、各国の王族たちの事情にも通じている。
 なぜ、ハヴェルがここにいるのだろう。
 帝国の庭師として、雇われていたはずなのに。

「これから、新婚旅行へ行くのだが、庭に花を増やしてほしい」

 私のために庭師を雇ったのだとわかった。

「承知しました。シルヴィエ様が気に入られるような花を考えましょう」
「ハヴェル……。なぜ、帝国からこちらへ?」
「帝国との契約は終了し、新しい勤め先を探していました。シルヴィエ様の庭は弟子に任せてありますので、ご安心を」
「そうですか。もしかして、私のせいで解雇されたのではありませんよね?」
「もちろんです。帝国と結んでいた雇用契約の年数が終わっただけのことです」

 黒い髪と髭の奥にある青い瞳からは、本心を読み取ることがでできない。
 優しかったハヴェルを思いだし、一瞬だけよぎった疑念を消した。

 ――もしかして、お兄様かお父様がなにかたくらんでいるのではないかと思ったけど、ありえませんよね。

 ハヴェルが私を裏切るわけないのですから。

「新婚旅行からお戻りになられる頃には、庭の花を増やし、楽しめるようにしておきましょう」
「楽しみにしている」
「ええ。ハヴェル、ありがとう」

 廟を巡る期間は一ヶ月。
 ハヴェルがやってきた次の週、新婚旅行へ旅立ち、ドルトルージェ王宮を離れたのだった。

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