呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 侍女は床に手をつけ、顔を伏せ、怯えたように身を震わせた。
 俺が父上の子でないとするなら、知っているのは、ごくわずかな人間だけだろう。
 母の世話をしていた侍女たちは、年老いて皇宮から去ってしまい、誰もいなかった。
 シルヴィエの世話を任されていた老いた侍女だけは――

「教えてほしい。俺に真実を伝えるために、皇宮に残ったのだろう?」

 侍女は黙ったまま、なにも話さない。
 このまま、話さないつもりでいるのだろうか。

 ――俺の母上は。

 まさかとは思った。
 だが、俺は『死んだ母親の遺体を目にしていない』のだ。
 ただ、父上から死んだと聞かされただけだった。

「母上」

 肩が震え、弱々しい声で侍女――母上は顔をあげた。
 美しかった顔は、今までの苦労からか、実際の年齢よりずっと老いて見えた。

『ラドヴァンが皇帝になれば、わたくしは陛下に復讐できる……!』

 その言葉を母上が口にした時、すでに父上の愛情は消え、血の繋がらない俺を皇帝にしてやろうと考えたのだろう。
 それを暴かれたか、疑惑をかけられたかで、皇宮から追い出された。
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