呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 アレシュ様が、こちらを見て笑ったのだ。
 慌てた様子はなく、たった一言だけ聞こえた。

「ヴァルトル。風をここに」

 その瞬間、鷹の姿は消え、鷹は風となり、竜巻が生まれる。
 竜巻がすべての矢を飲み込み、折られ、地面に叩きつけられた。

「つ、続けて放てっ!」

 お兄様がいるというのに、お父様は容赦なく命令を下す。
 アレシュ様は指を軽く、矢に向けて動かしただけ。
 矢は見えない風の刃で、切り裂かれ、くだけ散った。
 兵士たちはこれが、偶然でないことに気づく。

「ドルトルージェの王子が、竜巻を起こしたのか?」
「あの力はなんだ?」

 人とは思えない力に、怯えだし、逃げようとする者までいた。

「ここから、逃げられる者は逃げろ」

 お兄様が兵士たちに言った。

「ラドヴァン! 逃げるなど、みっともない!お前は何度逃げるつもりだ!」
「無傷で帰せるのであれば、みっともなかろうが、俺は逃げろと命じる。父上が逃げないというのであれば、一人残ればいいだけのことだ」

 今までご機嫌をうかがっていたお兄様はいない。
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