呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 お父様に冷たい態度を見せ、私のことなど、目の端にも映していなかった。

「許さん! 誰でもよい! ラドヴァンを捕らえよ!」

 兵士たちが動く前に、お姉様の声がした。

「レネ」

 お姉様は毒の神の名を呼ぶ。

「な、なんだ。花の香り?」
「甘い香りがするぞ」

 どこにも花は咲いていないのに、風に甘い香りが混じる。
 その香りが毒だと気づいたのは、倒れた兵士を目にした時だった。

「な、なに!? 兵士たちになにをしたの?」
「毒というのは、人を苦しめるものだけではなく、眠らせるための毒もあるんですよ」

 兵士たちは睡魔に襲われ、倒れていく。
 一人、また一人と……
 それは恐怖だった。
 じわじわと効く毒の香り。
 けれど、不思議なことに、私とお父様だけは眠くならなかった。

「ヴァルトル」

 鷹の姿に戻った風の神が、アレシュ様の腕に止まる。
 さっきまで帝国側は、大勢の兵士に囲まれて圧倒的に優位だった。
 それが今では、私とお父様だけが、取り残されている。

「ど、どうして……?」
「風の障壁を作り、眠らないようにしただけだ」

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