呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 試しに名前を呼んでみる。
 俺の声に反応し、窓のほうへ振り向き、椅子から立ち上がった。
 ショールが足元に落ちたが、それさえ気にならないくらい驚いていた。

「お兄様……では、ありませんわね。どなた?」

 こちらは暗く、向こうの灯りも小さいから顔は見えないだろう。
 だが、シルヴィエ第一皇女で間違いない。

「今夜だけ警備を任された者です。花をお持ちしました」

 鉄格子の隙間から、先ほど摘んだ花を見せる。

「まあ! これは(スニフ)の花ですね。薬にもなるので、助かります!」
「薬ですか?」
「ええ。鎮痛薬として有効なんですよ。血行促進によろしいし、とても役立ちます」
「受け取っていただけますか?」

 シルヴィエ皇女は喜び、手を伸ばそうとして、ためらい、その手を引っ込めた。

「手袋をしていないから、今はあなたに触れられないのです」
「平気ですよ。手をどうぞ」
「でも……」

 少し伸ばせば、掴める距離。
 ためらう手の指を自分の指に絡め、引き寄せた。
 握る手に、銀髪が触れた。

「待って下さい! これ以上近寄るのは危険です!」
「これ以上は近寄れませんよ」

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