呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
 美味しい夕食を済ませ、湯浴みをし、着替え、侍女の仕事は終わり。

「ありがとう」
「……いいえ。お礼は不要でございます」
 
 いつもと同じやりとりに、私は微笑んだ。
 侍女は笑いこそしないものの、私と口を利くようになった。
 名前を呼ばれるような立場ではないと言って教えてくれない。
 
 ――とても控えめな侍女ですね。

 ベテランだけあって、仕事のみを片付け、淡々としたものだった。
 小さなランプが置かれた薄暗い部屋に、私は一人になった。
 以前は窓と扉に鍵をかけられていたけれど、今は鍵を開けたままにしてくれている。

「星がよく見えます。きっと明日は晴れますね!」

 庭に出て、空を見上げる。
 異国の香りがする人は、あれから一度も訪れていない。
 初めて手袋をつけず、じかに触れた人の手。
 思い出すと、少し切なく、そして胸があたたかくなる。
 でも、私はきっと一生忘れないと思う。

「もしも、私が皇宮から出られたなら……」
「それは、ここから逃げ出したいということか?」
「お兄様……」

 低く冷たい声に驚き、振り返ると、そこにはラドヴァンお兄様がいた。

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