呪われた皇女の結婚~敵国に嫁がせていただきありがとうございます!~
「いいえ。例えばの話です」

 お兄様は闇色の髪と瞳、冬の月のような印象を持つ。

「このような夜更けに、お兄様が訪れるのは初めてですね。お兄様も星を見ていたのですか?」
「いや。お前に会いに来た」
「私に?」

 月が雲に隠れ、お兄様の表情が見えなくなった。
 呪いを受けないためか、私とお兄様は一定の距離を取ったまま、近づかない。
 
「お前の嫁ぎ先が決まった」

 私はなにか言うべきだったのに、なにも言えなかった。
 ちょうど雲から月が顔を出し、お兄様の顔を照らしたから。
 
「シルヴィエ。お前は帝国から出たいか?」
「はい。幽閉されているよりは、外へ出たいと思います」

 ためらいなく、答えていた。
 暗くて顔が見えないとお兄様は思っているのか、私の返事を聞いた顔は、苦しみに耐える顔だった。

「そうか……」

 お兄様は私に嫁いでほしくないと思っているのだろうか。
 お兄様にとって、私は邪魔者だったはずなのに、本心は違う?

「なら、嫁げばいい。どうせ幸せにはなれない。傷ついて、ここへ戻ってくるだけだ」

 そう言って、お兄様は私に背中を向けた。
 再び月が雲に隠れ、暗くなる
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