30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
あっと思ったときにはもう遅い。
目の前の大翔がなにもない場所で躓いて、美加へ向けて体のバランスを崩していたのだ。

美加は咄嗟に両手を伸ばして大翔の体を支えていた。
大翔は驚いた様子で目を丸くして、それから慌てて美加から身を離した。

「ごめん。なんだ? なにもないのに足が勝手に……」
大翔は困惑顔で足元を確認しているが、やはりそこにはなにもない。

「悪かったね。大丈夫?」
大翔が気遣ってくれているのに、美加は石像のように硬直してしまって返事ができなかった。

代わりに麻子が「大丈夫でぇす」と答えて、美加を引きずってその場を離れていく。
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