３０歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです

でも、そんな単純な考え方で本当に大丈夫かな。
不安になったとき、エレベーターが目的の階に到着した。

扉が開いて廊下へ出た時、ちょうどこちらへ向けて歩いてくる大翔の姿を見つけて美加の頬がカッと熱くなった。

赤くなった顔を見られまいとうつむいて通り過ぎようとする。
そのときだった。

麻子がなにか閃いた顔になったかと思うと、美加の耳に顔を寄せてきた。
「人をつまづかせることができるかどうか、やってみてよ」

「え？」
聞き返すために顔を上げたとき、目の前に大翔が迫ってきていた思わず足を止めた。

焦りから『つまづかせれる？』と脳内で麻子の声が反復して、同時に念が飛んでしまった。