30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
濡れた手で蛇口をひねらなくて良いのはなにかと便利だ。
「それじゃ、私は先に戻ってるね」

本当に忙しいのだろう、麻子はほとんど立ち話もせずに給湯室を後にした。

カップを洗い終えた美加が給湯室から出たとき、前方から大翔が歩いてくるのが見えて思わず足を止めた。

元々宣伝部も同じフロアにあるから毎日のように顔は合わせている。
だけど意識し始めると急にばったり出会う買う数まで増えたように感じられる。

「あ、君……」

ゆっくり歩き出して横を通り過ぎようとしたとき、大翔から声をかけられて美加は驚いて顔を上げる。

「この前はコーヒーありがとう。美味しかったよ」
< 60 / 237 >

この作品をシェア

pagetop