レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
軽い口調でそう言いながら皇帝を顎で指す。無礼な態度に肝が冷えたが、ちらりと皇帝を見ると別段気にする素振りもみせなかった。こうした態度も日常なのかも知れない。
およそ君主と臣下のやり取りには見えない軽薄さに驚いていると、三日月型だった目が見開かれてノツィーリアの全身を見回した。
「初めて会ったときから思ってたけど、よくもまあこんな天女みたいなお姫さまを悪女だなんて言ったもんだよね~。陛下、今から褒美の変更って可能です?」
「始めから許可しておらぬといっておるだろう!」
「はいはい。じゃあね~」
魔導師は軽く手を振ると、その場から一歩も動かずにふっと姿を消した。
「まったくあいつは……。すまぬな、驚かせてしまって」
「いえ、気にしておりません、皇帝陛下」
返事した途端、眉をひそめた表情を返される。
何か無礼なことをしてしまったかもと不安を感じていると、皇帝が歯を見せて笑った。
「呼び方が戻っておるぞ。昨晩は、幾度も余のことを名で呼んでいたではないか」
「え! そ、それは……!」
昨日の夜は、肌を合わせている最中に『名を呼んでくれないか』と乱れた呼吸の間に耳元で囁かれて、夢中で『ルジェレクス様』と叫び続けてしまったのだった。そのたびに皇帝は『ノツィーリア』と姫を付けずに甘い声で何度も呼び返してくれていた。改めて思い出せば、そのときに体の奥に感じたしびれがよみがえる。
もじもじとうつむいていると、皇帝がノツィーリアの銀髪を手の甲で払い、襟足に手を差し込んできた。頭を引き寄せられて、そっと額を合わせられる。
至近距離から、優しい声が聞こえてくる。
「……まずは、名を呼ぶところから始めようか」
「は、はい。……ルジェレクス様」
「よろしい」
温かな笑顔、続けて鼻先に口付け。ちゅっと鳴らされた音が、心をくすぐる。
およそ君主と臣下のやり取りには見えない軽薄さに驚いていると、三日月型だった目が見開かれてノツィーリアの全身を見回した。
「初めて会ったときから思ってたけど、よくもまあこんな天女みたいなお姫さまを悪女だなんて言ったもんだよね~。陛下、今から褒美の変更って可能です?」
「始めから許可しておらぬといっておるだろう!」
「はいはい。じゃあね~」
魔導師は軽く手を振ると、その場から一歩も動かずにふっと姿を消した。
「まったくあいつは……。すまぬな、驚かせてしまって」
「いえ、気にしておりません、皇帝陛下」
返事した途端、眉をひそめた表情を返される。
何か無礼なことをしてしまったかもと不安を感じていると、皇帝が歯を見せて笑った。
「呼び方が戻っておるぞ。昨晩は、幾度も余のことを名で呼んでいたではないか」
「え! そ、それは……!」
昨日の夜は、肌を合わせている最中に『名を呼んでくれないか』と乱れた呼吸の間に耳元で囁かれて、夢中で『ルジェレクス様』と叫び続けてしまったのだった。そのたびに皇帝は『ノツィーリア』と姫を付けずに甘い声で何度も呼び返してくれていた。改めて思い出せば、そのときに体の奥に感じたしびれがよみがえる。
もじもじとうつむいていると、皇帝がノツィーリアの銀髪を手の甲で払い、襟足に手を差し込んできた。頭を引き寄せられて、そっと額を合わせられる。
至近距離から、優しい声が聞こえてくる。
「……まずは、名を呼ぶところから始めようか」
「は、はい。……ルジェレクス様」
「よろしい」
温かな笑顔、続けて鼻先に口付け。ちゅっと鳴らされた音が、心をくすぐる。