レンタル姫 ~国のために毎夜の夜伽を命じられた踊り子姫は敵国の皇帝に溺愛される~
『私のかわいいノツィーリア。人生、何が起こるか分からないんだから、最期まで諦めちゃダメよ』


(こんなにも素敵な出来事が私の身に起こるなんて……! お母様、本当に私、『これから幸せになっていこう』って、そう思うことができました。私の心を励まし続けてくださって、本当にありがとうございます)

 心に湧き立つ温もりに浸りながら、抱き付いた熱い体にそっと頬ずりする。
 その瞬間、ルジェレクス皇帝の肩がわずかに跳ねた。
 驚いた風な反応の意味が分からず、不思議がりながら顔を上げると、そこには照れくさそうな笑みが待ち構えていた。

「ノツィーリア姫。今そういうことをすると……」
「え? ……あ」

 次の瞬間には仰向けにされていた。
 真上から見下ろしてくる皇帝が、まるで逃がさないと告げるかのように、ノツィーリアの顔の両側に手を突く。

「昨晩の続きを求められていると受けとめたぞ」
「わ!? 私はそんな……!?」

 動揺する間に覆い被さってきて、唇を二回、三回と重ねられる。
 口付けを終えるなり頬ずりしてきた皇帝が、耳元で囁いた。

「今は難しいことは考えず、私の腕の中にいておくれ」
「はい、ルジェレクス様……!」

 そう答えた瞬間、ぎゅっと抱き締められた。

(なんて心地よい温かさなんだろう……!)

 夢の続きのような時間が再び幕を開ける。
 これは夢ではないんだ、本当に、現実なんだ――。ノツィーリアはうれしさのあまり、ルジェレクス皇帝に抱き付いた腕にぎゅっと力を込めた。


 その仕草は皇帝を焚き付ける結果となり――。
 ノツィーリアはまたさらに声が掠れてしまうまで、一瞬たりともルジェレクス皇帝から解放されることなく、甘い時間を過ごしたのだった。


〈了〉
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