仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
もうヤケになって開き直っていた。
「ユニシロの何が悪いの!?安くて物持ち良いんだから良いでしょ!?」
「いや、気に入った」
「は?」
「アズハってやたらとセレブぶってる見た目ばっかで中身のない女だと思ってたけど、改める。むしろ良いな、あんた」
「はああ?」
さっきから何故そんなに偉そうなんだ、と杏葉はイライラしていた。天才外科医とはそんなに偉いのだろうか。
ムカムカしている杏葉とは対象的に、壱護は少し楽しそうだった。
「俺は本来紹介じゃないと診てないんだが、迷惑かけたしな。特別に紹介なしで診る。初診は無料にしてやるよ」
「本当!?」
「但し、あくまで初診だ。その後どうすべきかは医者として判断を下すし、どうしたいのか決めるのも本人だ。そこはしっかり理解しておいてもらおう」
「わかってる!ありがとう!」
「それと、仮に本人の同意を得て何らかの手術をするとなった場合、治療費を免除してもいい」
「えっ、本当に!?」
願ってもない話に杏葉は瞳を輝かせる。
偉そうな奴だと思っていたことを即座に撤回した。
「だが、条件がある」
「何!?柚葉の怪我を治してくれるなら何でもする!」
「俺と結婚しないか?」
「わかった、結婚ね!……結婚?」
「ああ、結婚」
「誰と誰が?」
「俺とあんた」
キッパリと真顔で言い切る壱護。
その直後、杏葉の甲高い叫びが響き渡った。
「ええええええええ!?!?」