仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが、こういう時頼りになるなぁと杏葉は思った。
杏葉一人ならばどうしようどうしよう、とパニックになっていただろうが、壱護が冷静に指示してくれたおかげで慌てずに対処できた。
こういった頼り甲斐のあるところを目の当たりにすると、キュンとしてしまう。
そして改めて先程のことを思い返す。
「(さっきの壱護、何しようとしてた……?)」
思い返して再び顔が熱くなり、心臓の鼓動が速くなる。
あのまま何も起こらなかったら、今頃唇が重なり合っていたのだろうか。
「(なんでキスしようとしたの!?)」
恋愛経験ゼロの杏葉は当然キスの経験もない。
ましてや男性の顔があんなに至近距離にあった経験ですらない。
恋多きモテ女・アズハの正体は初恋すらまだの初心な女性なのだ。
「そろそろ到着だな」
「えっ!?」
「クルーズが終わるって意味だよ」
「ああ、そうね……」
「ここから一時間かかるとかじゃなくてよかった。知り合いのドクターにも連絡しておいたからすぐに診てもらえるだろ」
「えっ、いつの間に。ハワイに知り合いのドクターとかいるんだ」
「俺を誰だと思ってる」
「っ!」
自信満々な笑みがやたらとカッコよく見えてしまうのは、ロマンチックな夜景をバックにしているからなのか。
「(さっきのは何だったのよ……)」