嘘からはじまる恋のデッサン
「優!」
「待ってたんだぞ……」

私の姿を見た両親はそう言うとすぐに駆け寄ってきて私を二人してぎゅうっと抱きしめてくれた。

すごくあったかくて嬉しくて私は暫く涙が止まらなかった。

そしてその夜、両親とはたくさん話し合った。その中で両親が自分たちは好きなことを優先して大学を出たが、社会に出たときに天文の知識がまるで役に立たず、働きながら経営や営業のノウハウを勉強したこと、私の為を思って経済学部を勧めてくれていたことを話してくれた。

その上で私はやっぱり絵を専門的に学びたいこと、できたら絵を描くことを職業にしたいと思っていることも包み隠さずに話した。

「そんなに絵が好きだったなんて……気づかなくてごめんね」

「わかった……優の人生だ。やりたいことをやってみなさい」

「パパ……ママ……ありがとう……」

私はそう言うと泣きすぎて真っ赤になった目で両親の顔をそれぞれ見つめた。

「パパ、ママあのね……」

両親は私の続く言葉をじっと黙って待っている。

私は両の手のひらを握るとようやくその言葉を口にする。

「私……パパとママどっちかなんて選べない……どっちもそばにいてほしい……小さかったときみたいに……仲良くして欲しい……私ももっといい子になるから……もっと勉強も頑張るから……っ……だからね……家族やめないで……っ」

私はそう言うと子供みたいに泣きじゃくった。こんな風に両親の前で泣いたのは、きっと欲しかったぬいぐるみを買ってもらえなくて駄々を捏ねた時以来かもしれない。

確かそのときも──結局パパとママは。

長い長い沈黙があって、私の涙がいよいよ枯れて疲れて眠ってしまいそうになった時だった。

父がボソリと呟いた。

「分かった……努力してみる」

その言葉を聞いて隣の母を見ると、母は泣いていた。母の涙は初めてだった。

「……ママも……わかったわ……ごめんね、優」

「パパも悪かった……ごめんな」

私は首をぶんぶん振ると枯れた涙は今度は嬉し涙になって、私の頬を優しく濡らした。


その言葉通り、あの夜を境に両親が激しく喧嘩をすることはなくなった。私のために我慢をさせてしまったかなとはじめは少し罪悪感に駆られたこともあったが、時が経つほどに夫婦の仲が少しずつ修復されていくのを感じて私はすごく嬉しかった。

喧嘩になりそうなときは、私が間に入ればすぐに二人が「ごめんね」の言葉を口にしてくれるようになり、月に一度は家族で外食したり、プラネタリウムを観に行ったりと、私は二人が私の為に互いに寄り添い歩み寄る努力してくれていることが本当に嬉しかった。
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