スパダリ航海士は契約妻を一途に溺愛する。




「お母さんにも言ったけど……まだ、結婚は考えられないよ。ごめんね」

「だがな、百々芭。ずっと“まだ”と言ってるじゃないか。いつになったら“まだ”が来るんだ。最近じゃ、近所でも娘さんは結婚しないんですかって聞いてくるんだよ。だから、その、仕事はここで区切りにして帰ってこないか?」

「……はい?」

「仕事をしているから結婚しようと思えないんじゃないか? なら、いっそのこと辞めなさい。こっちに戻ってお見合いでもしたらいい」



 お見合い?仕事を辞める?何言ってんの……


「私は、仕事を辞めてこっちに戻ってくるくらいなら結婚なんて一生しない。今が一番楽しいの。責任のある仕事を任されて憧れだった東京で働けて、今がとても幸せ。十分すぎる幸せがあるのに、それを手放して結婚なんてするわけないでしょ。世間体とか、私にとってはどうでもいい」

「なっ……!」

「それに、私のこと知らないのに知ったようなこと言わないでよ」


 私はそう言うと、荷物を持って居間を出て自分の部屋に行った。





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