名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】


 衝撃の初対面を終えると、雛未と祐飛は弓親の部屋の中に案内された。
 ひとり暮らしだという部屋の中には本棚がいくつもあり、どれもこれも限界までぎゅうぎゅうに本が積まっていた。
 
「すまないね。砂糖とミルクは切らしているんだ」
 
 そう言ってコーヒーカップをテーブルに置く手は小刻みに震えていた。
 真っ暗な水面にいくつも小波が立ち、カップから液体が零れそうになった。
 雛未は自分がベリが丘にやって来た経緯を話すと、コーヒーには手をつけず早速本題に入った。
 
「この手紙は貴方が母に送ったものですね?」

 バッグから手紙を取り出し弓親に渡すと、間髪入れずにこう返ってきた。
 
「ああ……私が書いたものだ。間違いない。彼女は?今どうしている?」
「今年の一月に亡くなりました」
「そうか……」

 弓親はショックだったのか、悲しそうに肩を落とした。

「なぜ、お兄さんである國治さんの名前を騙って手紙を書いたんですか?」

 國治の名前が使われたせいで、余計な遠回りをいくつもすることになった。
 同じことを國治にも尋ねたが、彼もなぜ弓親が自分の名前で文通をしていたのかは知らなかった。

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