名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
若狭國治の弟、弓親は兄と同じくベリが丘に住んでいた。
聖に教えてもらったサウスエリアの住所には、分譲マンションが建っていた。
教えてもらった部屋番号を押し、住人を呼び出す。國治の名前を出すと、意外なほどにすんなりマンションの中に入れてもらえた。
「雛未」
「うん、大丈夫」
心配そうに肩を抱く祐飛に、雛未は大きく頷いてみせた。
意を決して玄関扉のインターフォンを押した数秒後、住人がひょいと姿を現した。
「若狭弓親さんですか?」
「ああ、そうだ。君たちはどちら様?兄の秘書なのかい?」
……この人だ。
雛未の直感は目の前にいる男性が父親だと訴えていた。
同じ背格好、同じ顔だが、銀縁の眼鏡をかけた面差しは、長年政治の世界に身を置いていた國治よりもはるかに優しげだった。
手紙に綴られていた穏やかな雰囲気そのままだった。
「私は不破雛未と申します。雨宮菊香の娘です」
母の名前を口にすると弓親は息を呑んだ。
ひと呼吸置いて、さらに続ける。
「初めまして、お父さん」