名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(本当に知らないことだらけだったなあ……)
昼食を食べ終わると、午後からは特別室でアテンド業務に従事する茉莉と、カフェテラスの前で別れた。
ひとり廊下を歩きながら、雛未は改めて自分の幸運を噛み締めた。
(結婚相手が祐飛さんじゃなかったら、こんなにスムーズに雇ってもらえなかったのかも)
雛未を紹介してくれた祐飛の名に恥じないよう、午後もマニュアル片手にパソコンと向き合う。
カフェで働く前は、製鉄会社の工場で事務員として働いていたこともあってか、デスクワークはさほど苦にならなかった。
病院に勤務するのは初めてだが、パソコンの扱い方にはそれなりに慣れている。
社会人経験のある雛未は、即戦力として大いに歓迎された。
本来なら研修に二週間ほどかけるそうだが、人手不足もあり、研修期間を少し前倒しすることになった。
実際に特別室にある受付カウンターへ座るのは、十日後になりそうだ。
十日が早いかと感じるか、短いと感じるかは、その人次第。
雛未にとっては、随分と先の長い話に思えた。