名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】

 ◇

(うー。目が滑る……)

 研修期間も折り返しが過ぎ、この日は仕事が休みだ。
 せっかくの休みだというのに、雛未はテーブルの上に茉莉から借りたテキストを広げ、医療事務の勉強に励んでいた。
 一生懸命覚えようとするが、用語が難しくちんぷんかんぷんだ。
 昔から、勉強の類は苦手だ。身体を動かしている方がよほど気楽だ。
 うーんと唸りながら、なんとかテキストを読み進めていく。

(茉莉さんが良い人で本当によかった)
 
 年齢が近いこともあり、雛未は茉莉と今やすっかり打ち解けていた。
 茉莉の人懐こく、物事をはっきりと言う性格は隠し事ばかりの雛未には眩しい限りだ。
 目的がはっきりしている分、仕事もきっちりこなすタイプなので仕事の面でも頼りにしきっている。
 ベリが丘にやって来る前は、毎日パーティーを開いて遊び暮らしている人しかいないと、色眼鏡で見ていた。
 実際に住んでみるとベリが丘にだって労働者階級の人はいるし、意外に皆、普通の生活を送っている。
 ただし、他の街の常識とかけ離れた部分もある。

< 59 / 190 >

この作品をシェア

pagetop