名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(やだ……!何を思い出してるのよ!)
雛未は邪念を打ち消すために、ブンブンと首を横に振った。
今は目の前の調理に集中する。
雛未はふうっと息を吐き出すと、慣れた手つきでひき肉を丸め、小判形に成形した。
焦げないようにフライパンで蒸し焼きにし、最後は調味料を煮詰めてソースを作れば、和風おろしハンバーグの完成だ。
つけあわせにサラダを添えたら完璧だ。
ハンバーグをプレートに盛り付け、テーブルに置いたその時、玄関からガチャンと鍵が開く音がした。
「祐飛さん?」
祐飛がリビングに姿を現すと、雛未は思わず固まった。
「どうした?」
「あ、いや……。こんなに早く帰ってくると思ってなくて……」
「今日の手術は予定通りに終わった。他に問題がなければ帰ってくるに決まっている」
その言う通りだ。ここは祐飛の家であり、間借りしているのは雛未の方だ。
「おかえりなさい、祐飛さん」
「ただいま」
母が亡くなってから、おかえりと言ったのは初めてかもしれない。
ありふれたやりとりなのに、胸の奥がくすぐったくて仕方ない。
雛未は祐飛の分もハンバーグを盛り付け、ともに夕食を囲んだ。
一緒に暮らし始めてから十日目にして初めてのことだった。