名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「あ、の……。祐飛さん……?」
背中に感じる祐飛の温もりは、オーベルジュでの初夜を彷彿とさせた。
――食欲の次は、別の欲を満たそうとしている。
これ以上はまずいと本能が警鐘を鳴らした。
(あれ一度きりじゃなかったの……?)
初夜こそ雰囲気に流されて応じてしまったけれど、本来なら性交は必要ない。
この結婚は期間限定。
避妊はしたものの、万が一でも子供ができたら困る。こういった行為を続けている限り、妊娠の可能性はゼロにはならない。
きっとあの日断らなかったのは、男性と"そういう"雰囲気になることが久しぶりすぎて動揺していたせいだ。
二回目の今なら、毅然とした態度がとれるはず。
雛未はキスしようと近づいてきた祐飛の顔を、遠慮なしに両手で押し返した。
「……なんだよ」
妨害された祐飛は眉根を寄せ、不満げに雛未を見下ろした。
「私達、名ばかりの夫婦なんですから、これ以上する必要ないんじゃないですか?」
「……なんで?」
「なんでって……」
好き合って結婚したわけでもないのに、家の中で本物の夫婦のようにスキンシップをとる必要がどこにある?
今説明したばかりなのに、祐飛はなぜか納得してくれなかった。