名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「ああ、やっと触れる……」
祐飛の声には、ずっと我慢していたと言わんばかりの、喜びが滲んでいた。
(こんな時だけ嬉しそうにするなんてずるい……!)
雛未が快適だと思っていた生活の裏で、祐飛がそんな風に思っていたなんてちっとも知らなかった。
雛未の警戒心は少しずつ緩んでいった。
一度侵入を許せば、あとは簡単な話だ。
雛未はなし崩しで再び祐飛を受け入れてしまった。
「あっ……ん……!」
服を脱がされた雛未はシーツを逆手で握りしめ、祐飛の愛撫に耐えていた。
祐飛は唇を避ける代わりに雛未の身体のあらゆるところに甘く口づけた。
うなじ、背中、太腿の内側と、口づけられた箇所が熱を帯びていく。
(私……また……祐飛さんと……)
ダメだと頭では分かっていても、抗うことができないでいる。切なげに雛未の名前を囁く祐飛には、どうやっても勝てそうもない。
(どうして……?)
祐飛の愛撫に自分を見失いそうになりながら、必死で考える。
数週間前に出会ったばかりの、名ばかりの妻。
愛情なんてかけらもないのに、どうして身体まで欲しがるの?
(こんなはずじゃなかったのに……!)
シーツに押しつけられた左手の薬指には、結婚指輪が鈍く光っていた。