名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
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「じゃあ、雛未さん。今日からよろしくお願いしますね」
「はい」
雛未は緊張した面持ちで特別室の受付カウンターの前に着席した。
特別室は西棟の八階、高台にあるベリが丘病院の中でも一際、高層階に設けられていた。
受付の目の前には専用のエレベーターがあり、面会者は病院に入る前に必ずこのカウンターに立ち寄る必要がある。
「入院中の患者さんは、この画面に出てきます。誰がどこに入院しているかは院内でも内緒なので、くれぐれも注意してください」
ノートパソコンに映し出されているのは、特別室のフロア図だ。
受付を抜けると十字に通路があり、通路が交差する部分には、特別室専用のナースステーションがある。
フロアの四隅がそれぞれ病室となっており、左隅から時計回りに一号室から四号室まで名前がつけられている。
そして、病院を示すオブジェクトの隣には患者の名前と担当医の名前が記されていた。
(あ……)
三号室の患者の名前に『若狭國治』の四文字が記載されているのを見て、雛未に緊張が走る。
(本当に特別室に入院していたんだ……)
祐飛を信用していないわけではないが、この目で見るまで半信半疑だった。
担当医は『不破祐飛』となっている。
雛未はこの時初めて、祐飛が若狭議員の担当医であることを知った。