名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「面会者用のIDカードをお渡ししますので、お帰りの際はご返却ください」
病室の手前にはオートロックつきの扉が設けられている。入室には、専用のIDカードが必要だ。
退室時はアテンドが遠隔操作し、ロックを解除する必要がある。
他の病室の面会者と鉢合わせしないよう、配慮するためだ。
もちろん、特別室に至るまでの直通エレベーターと出入り口も同様の管理がなされている。
祐飛の言っていた通り、セキュリティは厳重でアリの子一匹も通さないという病院側の気構えを感じる。
――黄金でできた鳥籠に見えなくもない。
(ちょっと厳重過ぎない?)
雛未にはやり過ぎとしか思えなかったが、逆に情報が守られているという安心感もあるのだろう。
純華がオートロックの扉の先に消え、次の予約者までの時間を持て余していると、手元の電話が鳴り響いた。
特別室にはナースコールとは別に、アテンド直通の電話がある。
茉莉からの合図を受け、雛未は電話をとった。
『すみません。簡易ベッドの畳み方がわからなくて……手伝ってもらえませんか?』
「はい。今行きます」
電話の相手は純華だった。受話器を置くと、深呼吸する。