名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
「三号室に行ってきます」
「ひとりで大丈夫?」
「はい。ダメそうなら、呼びます」
受付のカウンターから立ち上がった雛未の心臓は今にも飛び出しそうなほど、強く脈打っていた。
まさか、カウンターに座り始めたその日に、若狭議員の病室に入れる機会が訪れるなんて。
若狭國治の安否を知るために祐飛と結婚し、ベリが丘病院に潜入したが、業務から逸脱した行為は当然許されていない。
(約束は守らなくちゃ……)
雛未はベリが丘病院で勤務するにあたり、祐飛とふたつ約束をしていた。
――手紙の件を話す時は、必ず祐飛が同席すること。
――いつ話をするかは、祐飛が決めること。
勝手な行動はしないと約束したが、業務上必要な行為なら話は別だ。あちらから呼んでくれるなら好都合。
雛未は若狭議員が入院している三号室の扉をノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
その場に一礼してから病室に足を踏み入れる。
特別室の内装は病室というよりは、ホテルの一室に近く高級感のある無垢材のインテリアで統一されていた。
専用の風呂とトイレも備えつけられており、食事もすべて栄養士が監修し、個人の体調と病状に合わせてオーダーメイドで作られている。
申請すれば、簡易ベッドで家族も寝泊まりが可能だ。
一泊いくらなのか、もはや想像できない。