名ばかりの妻なのに、孤高の脳外科医の最愛に捕まりました~契約婚の旦那様に甘く独占されています~【極甘婚シリーズ】
(まあ、本人も亡くなってるし……。少しくらいいいよね?)
個人宛の手紙をこっそり読むなんて悪趣味な気もしたが、筆不精の母がどんなやり取りをしていたのか知りたいという好奇心には勝てなかった。雛未は麻紐を解き、適当に選んだ封筒から便箋を抜き出した。
何が書いてあるのか、考えるだけでワクワクした。
ところが、読み進めていくにつれて、雛未の表情は曇っていった。
「これって……」
雛未は困惑し、思わず口元を手で覆い隠した。
手紙には切々と母への愛が綴られていた。
まるで恋愛小説の一節のような詩的な表現と、多彩な文面で母の美点が書き連ねられている。
雛未は憑りつかれたように、次々と封筒を開け、手紙を読み漁った。
日常に起こったとりとめのない出来事を書いているものもあったが、どの手紙も必ず最後には変わらぬ愛を誓う文面で締めくくられていた。
雛未は最後の手紙を読み終わると、おそるおそる封筒を裏返し、差出人の名前を確認した。
「若狭國治……」
最後に送られてきた手紙の消印に刻まれた日付は、雛未が産まれる半年ほど前のものだ。
雛未は茫然としながら呟いた。
「もしかして……この人が私の父親……?」