まどろみ3秒前

sleep 2


「っ…」


―ゆっくりと、瞼を開ける。

見慣れない、真っ白な天井が広がっている。ここはどこだろう。どうして私は助かっているのだろう。どうして私は、生きてるの?

ああ、どうして死なせてくれないのだろう。どうして生きさせてくるのだろう。生きてなにがあるんだろう。やめてよ、もうやめて。


「あ、おはよ翠さん」


お母さんの声でも弟の声でもない。聞き慣れない低い声が私の耳に響き渡った。


「今は、いつですか?」


私は、天井に向かって聞いた。いつ、なんて言葉を使うのは私だけだろう。


「いつって…とりあえず大丈夫?気絶して眠ってたみたいなんで、頭とか痛かったりあります?体も冷えてたみたいなんで寒気とか、」

「今は、いつですか」


私は、上がらない口角で天井に向かって再び聞いた。偽善者みたいな、そんな心配いらない。そういうのもういいからと腐った気持ちだった。


「…さっきから天井に話しかけてんの?」

「…今は、いつなんですか…」


あの朝のように、私は恐る恐る聞いた。怖くて、体は小刻みに震えていた。もう何も、変わらないでほしくて、怖かった。

天井をぼんやりとした頭で見つめる。それ以外の焦点とは、合わせたくなかった。
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