まどろみ3秒前

追いかけようとしたが、足を止めた。待っててって朝くんが言ったんだから、待とう。

いつからか、ひとりがとても不安に感じるようになったみたいだ。朝くんと出会ってからだろうか。

私は、飼い主を待つ犬のように、じっと待つことにした。


―何かを後ろに隠したまま、朝くんが小走りで帰ってきた。私を見た途端、優しく笑う。


「ただいま」


風で前髪が上がり、どこかセンター分けのようになっていて、顔立ちの綺麗さがわかる。私は、「どこ行ってたの?」と首を傾げた。


「安眠グッズ」

「え、この一瞬で買いに?」

「そ。いや、買ってないけど」


意味がわからない。いや、安眠グッズって一体なんなんだ。枕とかアロマ?予想する隙も与えてくれない朝くんは、後ろに隠していたものを、私に差し出した。


「俺は、言葉が嫌い。人間が勝手に花に付けて価値をつける、花言葉ってやつも嫌い」


朝くんは「でも、」とどこか寂しそうな顔で続ける。


「翠さんのこと思ってたら、幸福って花言葉も、好きになっちゃった」


それは、四つ葉のクローバーだった。茎も合わせて私の手くらい大きさがあり、3束もある。4つの緑葉の数を持つ、切り花だった。


元気に茎を伸ばし、空の方に咲いている。

本当に、クローバーは幸福の象徴に思えた。

< 281 / 426 >

この作品をシェア

pagetop