まどろみ3秒前

「じゃ、絶対明日一緒に帰ろう!忘れないでよー?」


ハキハキした女子の声がした。交差点で別れの挨拶でもしているみたいだ。制服が似ているけど違うし、自分の高校の人ではないことに少し安心した。


「うん!絶対ねー」


噛み締めるように、もうひとりの女子が笑顔で言った。

通りすぎようとした。通りすぎようとしたのに、なんでなんだろう…

電灯の下には自分の影がある。足が、止まっていたことに気付いた。


「…っ、」


遠目だけど、しっかり見えた。茶色く長い髪、綺麗な黒い目。目の下には、くまが浮かんでいる。頑張って笑って、口角が上げているように見えた。

息が出来なくなるくらい、その姿に見惚れてしまった。

なにあれ、触れたら、壊れてしまいそう。

死を願って待ってるみたいな、目。


やば…やば…


夏の暑さとか、夜空の星の綺麗さとか、ひるのことも、告白されたことも、自分の不眠症のことも。


全部、その瞬間、消えた。


あの人と一緒に、崩壊したい。

そう思ってしまった。


あーどうして出会ってしまったんだろう。


言葉で表せないみたいな、好きだった。


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