私と彼の溺愛練習帳
 司会がスーツで現れ、口上を述べた。
「今宵はお集まりいただきましてありがとうございます」

 彼は礼を言い、ショーの内容を説明した。最初は一人のダンサーが踊り、次に集団の演舞。続いてドローンのダンスが三本の予定だった。彼はジョークを交えて場を盛り上げ、空気を和ませる。

 彼が下がると会場に静けさが降りた。幕が上がり、ステージ中央にスポットライトが当たる。
一人の男性が座り込んでいた。
 ばっと立ち上がる。と同時に音楽が鳴り響く。
 あとは彼の独壇場だった。その動きに、目がすいついて離れない。

 キレのある動き。関節を感じさせずになめらかに動いたかと思うとカチッと止まる。リズムに合わせ、テンポよく踊る。ただひたすらかっこよかった。

 続いての女性の集団の演舞も素敵だった。入り乱れる人々は、だがぶつかることなく華やかに踊る。客席との距離が近い分、迫力があった。
 彼女らが舞踊を終えてお辞儀をすると、雪音は夢中で拍手を送った。

 いよいよドローンのダンスだ。
 雪音の胸は否が応にも高鳴った。

 いったん降りた幕が上がると、一人の女性がうずくまり、その上に一機のドローンが浮かんでいた。
 ドローンがふわりと上昇する。と、女性が吊られるように立ち上がった。
 ドローンが移動すると女性も移動する。ドローンは常に彼女の上空にいた。彼女は支配されたようにぎこちなく踊る。

 と、女性は急にドローンから離れた。
 糸が切れたかのように倒れ込む。
 彼女は起き上がり、自由に踊り始めた。ドローンは戸惑うように彼女の周りを舞う。
 彼女が押すとドローンは引き、離れると彼女を追う。

 彼女は最後、なにかから解き放たれたように喜びを踊り上げた。
 ドローンは彼女を祝福するように光を投げかける。
 最後のポーズを決めたとき、会場からは自然な拍手が起きていた。

「ドローンが生きてるみたいだった」
 目を輝かせて言うと、閃理はうれしそうに微笑した。
「そう言ってもらえて良かった」
 続いてのダンスは、男女二人だった。
 全裸だ、と雪音は驚いた。
 二機のドローンがB4ほどの布を垂らして二人の大事なところを隠している。
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