私と彼の溺愛練習帳

***

「お前、さっさと帰れよ」
 征武が言う。
 んー、と閃理は気のない返事をする。
 彼は今、征武のマンションにいた。

 1LDKのリビングのソファに二人で並んで座り、征武はドローンを磨いていた。閃理はその隣で膝を抱えて床を見つめていた。

「彼女さん、心配してるだろ」
「ん……」
 いくつか心配するメッセージが届いていた。
 着信は一回だけ。
 必死に我慢して、それでもこらえきれずに電話をしたのだろう。
 出なかったことに罪悪感があるが、今は出たくなかった。

「二日も連絡なく帰って来なかったら、普通は警察に相談に行くタイミングだろ」
「……そうかな」
「そうだよ」
 ドローンを磨きながら、征武は言う。

「すごい素敵だ、愛してるって言ってたじゃん」
「うん。かわいくて、年上に見えない」
 年相応の外見に見えたけどな、と征武は思う。閃理にはそう見えているのか。

「それ、本人は傷付くんじゃね?」
「そうかな」
「年相応に成長できてないって言われてるようなもんだから」
「でも、いつも年上なのを気にして、僕が好きって言っても信じてくれなくて」

「それでいじけて出て来たのかよ。子供か」
「……抱いてくれって言われた」
「はあ?」
 征武は声を上げた。
「なんでそれで家を出るんだよ」

 きっと彼女を無茶苦茶に抱いてしまうから。
 言えなくて、閃理は黙り込む。
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