私と彼の溺愛練習帳
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「お前、さっさと帰れよ」
征武が言う。
んー、と閃理は気のない返事をする。
彼は今、征武のマンションにいた。
1LDKのリビングのソファに二人で並んで座り、征武はドローンを磨いていた。閃理はその隣で膝を抱えて床を見つめていた。
「彼女さん、心配してるだろ」
「ん……」
いくつか心配するメッセージが届いていた。
着信は一回だけ。
必死に我慢して、それでもこらえきれずに電話をしたのだろう。
出なかったことに罪悪感があるが、今は出たくなかった。
「二日も連絡なく帰って来なかったら、普通は警察に相談に行くタイミングだろ」
「……そうかな」
「そうだよ」
ドローンを磨きながら、征武は言う。
「すごい素敵だ、愛してるって言ってたじゃん」
「うん。かわいくて、年上に見えない」
年相応の外見に見えたけどな、と征武は思う。閃理にはそう見えているのか。
「それ、本人は傷付くんじゃね?」
「そうかな」
「年相応に成長できてないって言われてるようなもんだから」
「でも、いつも年上なのを気にして、僕が好きって言っても信じてくれなくて」
「それでいじけて出て来たのかよ。子供か」
「……抱いてくれって言われた」
「はあ?」
征武は声を上げた。
「なんでそれで家を出るんだよ」
きっと彼女を無茶苦茶に抱いてしまうから。
言えなくて、閃理は黙り込む。