私と彼の溺愛練習帳
「元カレ、何人いるの?」
「二人だけよ!」
「で、その初カレとうれしくない再会したってところかな」
 雪音はうなずいた。

「しばらく僕が迎えにいくね」
「あなたも仕事があるのに」
「怖かったんでしょう?」
 聞かれて、雪音は答えられなかった。

「時間は融通がきくから。在宅仕事のいいところだよ」
 閃理は微笑む。
 結局、伶旺が怖くて雪音は迎えを頼んだ。



 しばらくはなにごともなかった。
 迎えに来る閃理を見た美和は、初めて見た! と希少動物を見たかのように喜んでいて、雪音は苦笑した。
 彼は毎日迎えに来てくれるが、一週間たってもなにもないので、だんだん申し訳なくなってきた。

「もう大丈夫かなあ……」
「油断したころにやってくるんだよ」
 そう言って、彼は雪音の手をつないだ。

「ちょっと!」
「手をつなぐぐらいいいじゃん。それとも、もっとすごいことがいい?」
「すごいことって」
 雪音が顔を赤くすると、彼はふふっと笑った。

「またからかって!」
「かわいいよ」
 閃理はそっと耳にささやく。
「もう……」
 照れて視線をそらしたときだった。

 正面から、伶旺が歩いて来た。
 雪音に気付いた彼は、まっすぐに彼女に近付く。
 思わず立ち止まった雪音にきがつき、閃理は警戒をあらわにした。
「探したよ、雪音」
 にやにやと彼が言う。
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